「昔はよかったと言うけれど」大倉幸宏著
「最近の若者はマナーが悪い」とか「世の中がだんだん悪くなっている」
というのを耳にすることがありますが、私の個人的な感覚では、だいたい、
駅員を捕まえて怒鳴っているのは、団塊世代と思われるオヤジだし、路上
で平気でタバコを吸っているのも、電車で大声で話しているのもオヤジだ
ったりするわけです。
この話し、マナーとモラルという問題が一緒くたになっているように思える
のですが、じつは、公衆道徳が悪化しているという話しに対して、それと
同じことが戦前にもあったことが本書で示されています。
「昔はよかった」というけれど 戦前のマナー・モラルから考える
大倉幸宏著 新評論 2100円
席を譲らない若者、社内で化粧をする女性、子どもや老いた親を虐待す
るひとたちなど、戦前からもあったことが知られていないだけで、いつの
間にか、それがいま独自の現象であるかの如くとらえられていると、著者
の大倉幸宏氏は語っておられます。
だいたい、人間って、数日前のランチでなにを食べたかすら思い出せない
ほど忘れやすいものです。だからきれいな部分だけ残って、過ぎ去ったこ
とを美化しやすいということなんでしょうか。
いまを嘆きたいときの対象として、昔のことを持ち出すのは、中高年の
常套手段なわけです。 と、いいながら私もそんな世代ですが。
補足:
この本が話題になったきっかけは、2013.11.12.(火)付朝日新聞の
天声人語です。