高田 郁「ふるさと銀河線」、ムシヤシナイに感銘を受ける
高田 郁さんといえば、NHKの木曜時代劇「銀二貫」の
原作者です。
このひと、時代ものばかりかと思っていたら、現代ものの
短編を書いておられたので読んでみました。
とても人の優しさで癒される作品ばかりでしたが、
とくに「ムシヤシナイ」に感銘を受けました。
「ムシヤシナイ」は「虫養い」と書きますが、「軽く
なにか食べて、腹の虫をなだめておく」という意味
のようです。
内容としては、大阪のとある駅で、立ち喰い蕎麦屋の
店長をしている祖父に、東京から15歳の孫がひょっ
こり現れます。
父親から「努力が足りない」と責め立てられる毎日に
思い詰めての家出だった。
祖父は孫の事情も聞かずに受け入れてくれた。
虚しくなんない? 立ち喰い蕎麦を食べに来る客は、
別に料理に期待していないし、手っ取り早く食欲満
たしてるだけでしょ?立ち喰い蕎麦はちゃんとした
食堂とは違うし・・・。
「おまえの言う、『ちゃんんとした食堂』ばかりなら、
世の中、窮屈で、味気ないと思うで」
「目の前に包丁があると、父親を刺しそうな気がして
息が出来ない」と震えながら涙を流す孫に、次の夜、
薬味のネギを刻む包丁を持たせました。
「包丁は、ひと刺すもんと違う。ネギ切るもんや」
やさしく語りかける祖父に、孫は人として生きて
いく力をもらうのでした。