北ア・西穂遭難、難しいけど天候判断が運命の分かれ道ですよね
毎年、年末年始での山岳遭難のニュースが報道されます。
今回の遭難事故では、3人のパーティのうち、2名は山岳救助隊に
よって救出され、西穂山荘まで戻り、それから新穂高ロープウェイで
下山したとの報道がでています。
冬季に西穂をやるようなひとだから、かなりの熟達者だと思われますが、
冬山は常に危険と隣り合わせということですね。
たぶん、山をやらないひとから見れば、そんなところにわざわざ行って
遭難するのは可哀想だけど、自己責任だよね。などと思われいることと
思います。
さて、山頂から約100メートル南の標高2800メートル付近で3人を発見
という報道ですから、だいたい下の×のあたりでしょうか?
私は社会人成り立ての頃に今回のルートで西穂独標まで行った
ことがあります。
この登山コースは、新穂高ロープウェイを使うと1時間半で冬季営
業している「西穂山荘」に着くことができる、雪山登山の人気コースに
なっています。
山荘から西穂独標までは、天候がよければ冬山初心者でも装備を
しっかりしていれば、比較的容易に行くことができます。
西穂山荘から先は、だいたいメンバーと相談して、天候状況
次第で、熟脱者は西穂高岳山頂まで、初心者から中級者は、
独標までいくか、天候が不安なら、丸山あたりまで行って戻る
ということにするわけです。
天候がよいと、トレース(雪上の足跡)がついていたり、吹きだまりも
先行者によって適度に固めてあったりしてよいのですが、天候が悪
化してくると、たいへんなことになってきます。
今回の遭難地点ですと、どう考えても西穂山荘まで戻る以外にエス
ケープルートはなく、吹きだまりでビバークするにも装備がないと凍
傷などの危険性も高いです。(実際助かったかたも凍傷の模様)
こんな感じでの下山を当時、何度か経験していますが、まあ、コース
を見失わなければなんとかなります。
しかし、天候が悪化して吹雪いてくると、竹の先に付けた赤い布の
道標(赤ぼっこともいいます)もわからなくなってしまいます。
わかりますか?稜線上の道しるべの赤ぼっこが?
しかも、独標から西穂高岳山頂までの間は、雪と岩の連続で、
アイゼンを岩に引っかけて転倒したり、滑落したりする危険の高い
北アルプスの難所、さらに風もあれば氷点下10℃以下になっている
はずです。
こんな場所に救助に行く救助隊の方たちも命がけなわけです。
もう、私はこんなチャレンジができる体力もザイルを結ぶ仲間もいな
いので、50歳を越えてもチャレンジしている今回の登山者が羨ましく
思えたというのが、この報道での最初の雑感でした。
しかし、結局のところ、冬山は「お天気次第」、しかもここ数年積雪が
ものすごく多いようなので、よほど山好きでない限り、山荘までで止
めておいたほうが無難ということでしょうね。
追記:1/5
西穂高で遭難の会社員が、ヘリで収容されたとの報道がありました。
死因は凍死だったそうです。ご冥福をお祈りいたします。
また、他の山域でも遭難が相次いでいるようです。無事、帰還される
ことをお祈りしております。
追記:1/7
剱岳でも4人が遭難、そして谷川岳でも新たに1人が下山できずに
いるとの報道がでています。
このブログでは西穂高のことを書きましたが、剱岳、あそこは西穂高
以上に危険ですよ。とくにビーコン反応がある場所はなだれの危険性
が高く、容易にひとが近づけませんから。