日本人の生死観と埋葬について

安置所や火葬場の能力を超える数の遺体が見つかり、東北の
被災3県で唯一地中に仮埋葬していた宮城県で火葬にめどが
立ち、改葬が始まっているそうです。

「夢の中にいて外国の映画でも見ているような気分」で」土葬を

了承されたとのご遺族の話しに、現場の凄さを感じずにいはおれ

ません。きっと、これでお骨にできるとほっとされていることと思い
ます。

改めまして、今回の震災でお亡くなりになられたみなさまの

ご冥福をお祈りいたします。

さて、戦後、制定された「墓地埋葬法」という法律によると、「埋葬
(土中に葬る)」と「火葬」が認められています。そして、埋葬は、
墓地以外の地域、火葬は、火葬場以外の施設では行う事ができ
ません(4条)。

法律上は埋葬は認められているようです。しかし、今回の震災で
は、墓地でない場所に埋めることに問題があり、仮埋葬となった
ものと思われます。

さて、今日の話題はこの「埋葬」なのですが、長い日本の歴史の
なかでみると、日本では埋葬といえば「土葬」が一般的で、戦前ま
では「火葬」より「土葬」が普通に行われてきしました。

日本人が、古くからの土葬をあっさり火葬に切り替えられた、

そのわけが気になって調べてみました。

折口信夫著『霊魂の話』という書籍によると、

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日本人は古代から、森羅万象に霊性が宿り、宇宙は神霊の意思

によって働いていると信じてきました。

それは人間においても、肉体と霊魂とは別のものであり、霊魂自

体が実体をともなったものという意識があったのです。

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つまり、人が生まれるということは、霊魂がある者の身体に宿ると

いうこと、人が死ぬということは、霊魂が身体を去るということでした。

霊魂は、肉体がなくなった後も、なお実体として生き続け、時には
守り神にもなり、また、厄病神にもなりました。

この霊魂は、肉体を離れた後、すぐに遠くへいなくなってしまうわけ

ではなく、死者の墓や遺族の周辺に漂っているものと考えられてい
たそうです。

遺族が供養したのは、亡骸というより、この漂う霊魂を対象として

いたようです。

現在も日本各地で古くから行われている、祭りや年中行事ですが、

これは、神となった霊魂をねぎらうというものがベースになっている

のだそうです。

日本人が古来脈々と抱いてきた生死観というものがあり、さらには、

その後伝来した仏教においても、その教義※において、残った遺体

は単なる物体扱いとなり、かなり無頓着でした。

仏教における世界観、人生観の基本として「三法印」というものが

あるそうです。

それは、諸行無常(しょぎょうむじょう)、諸法無我(しょほうむが)、

涅槃寂静(ねはんじゃくじょう)の三つです。

諸行無常・・何ひとつとして恒常な存在というものはない

諸法無我・・すべてのつくられたもの(諸法)には実体がいない(無我)

涅槃寂静・・あらゆる煩悩がなくなった心安らかな状態のこと(悟りの世界)

日本古来の神道仏教が合わさり(本地垂迹説※)その後の

日本人の生死観として、埋葬に対して寛容な土壌をもたらして

きたというもののようです。

※日本の八百万の神々は、実は様々な仏様が化身として日本の地に

あらわれたものであるという神仏習合思想のこと